東南アジア学生研究会 - 集う仲間たち
図南の翼、健やかなり!
東南アジア学生研究会初OB会開催の記
いや、暑い! アスファルトに固められた路面から陽炎が立ち上る。思い出の研究論文を詰めた重いカートを引く額に首に、7月18日の汗が噴き出し、背中か濡れる。
熊本からの高速バスの終点中央橋から、中華街まで歩いてきた。港のあたりの変わりようの大きいこと、美術館が現れ、高速道路の出口が市民病院の隣で口をあけている。初OB会の集まりを、我ながら何が悲しくてこんなくそ暑い真夏に企画してしまったのか悔やんだが、遅かった。空は無情にすっからかん。
経済学部には、往時から「東南アジア研究所」が学部の目玉として大きな存在感を示していたが、当時、学生自身がみずから東南アジアの経済を学び、自らの目で、足でその研究成果を実証するために現地に赴き、企業や地域経済を「身をもって知る」活動のために、「長崎大学東南アジア学生研究会(アジ研)」は、私よりも5〜6年ほど先輩方により産みだされたと聞いている。
志を高く持ち、進取の気性で現地で学びかつ実証をする、そのような気概が、卒業後の私たちに与えてくれた、しぶとさと、たくましさには感謝しきれない。
OB会には、当時のクラブの顧問で現在立命館大学で教鞭をとられている西口清勝教授も遠く京都から参加いただき、昭和53〜57年卒業(おおむね現在50〜55歳くらい)の合わせて13名の「残党」が集結した。
不安があった。待ちあわせの場所で隣にいながら、解らなかったら、どうしよう。みなほぼ30年ぶりの再会である。おそるおそる尋ねる。あの〜○○さんですか〜。そのとたんのむこうの安心した表情の変化は見ものである。むこうもわからなかったのだ。つづいて、おお〜、の歓声を上げる。いやー、おまえは白くなったなあ。そういうおまえはもうなくなったなあ。名乗らなければ、街ですれちがっても、取引先の担当者であっても、決してわからんな。途端に我らはかつての若い夢追い人にタイムスリップする。しかし最初に口から出ることばは互いに「健康のこと」。そうだ、もう50代になったんだあ。
互いの体型の崩れ方と、薄さの話と、子どもの話と、それから仕事の話と、イッパイのビールでひとしきり口が動き出してきたら、では、青春の坂道を歩こう、とグラバー亭散策に出発する。ここでは横目で活水のたたずまいをながめながらも、若き日の暴走には紳士協定につき互いに触れず、粛々と素敵な長崎の財産であるこの邸と港の風景を愛でながら、かつての長崎人としての懐古の風情を満喫し、邸内の散策を終える。
……はて、まだ思い出話が出てこないな?
宴席に移る。ここで合流する先輩方との間でまたさきほどの「む、む、誰だろう」の推理ゲームが再開する。毛がなくなっている者の方が大抵のところ勝利する。
かつての研究論文集が回される。写真が回される。みなの顔がほころび、安堵のしわが数を競う。
思い出話が出はじめた。これまでのイントロは30年の時間を均すのに必要だった。おまえが、あいつが、の機関銃が火を噴いた。
話は若き日々の思い出にとどまらず、熱を帯びた日本・世界の経済談義にもつれ込む。今や経済界の中枢を担っておられる諸氏のことばには実に重みと説得力がある。ふと思う。学生のころにこんな話をしたり聞いたりしていたら、今の自分は、どれほど活躍することになっていたことだろう、と、レバタラの世界に沈む。
久方ぶりに高商歌を放吟する。54年卒業の田渕先輩の正調の巻頭言に、座敷の舞台の緞帳の竜も酔いしれ、天に昇った。
翌朝は、有志による片淵ツアーを行った。お諏訪神社の石段を登った。だれ言うでもなくお参りをした。経済が近付くと、そわそわしだす。経済学部正門前のあの、時差信号が、あの片方通行の道路が、今やまっすぐの4車線に変身している。敷地内にはいくつかの新しい建物が建ち、そして昔の部室の礎が、草叢のなかに隠れていた。ここにプレハブの狭い汚い長屋があった。ときに資本論で激論し、ときにつたない英語に悩み、ときに書物に酒をひっくりかえしたテーブルがあった。草叢を眺める誰もの背中が、さびしそうにも懐かしそうにも映る。自分たちの現在ある姿のオリジンをそこに見出した安堵さもあったろう。
数年後にまたOB会で集まろう、と約束して、皆と別れた。あしたからまた、みなふだんの自分にもどる。
(学部30回(昭和57年)卒業 古城和哉)
熊本市在住
◆アジ研OBのみなさんへお願い
今回は連絡が取れた範囲で開催の通知を差し上げました。残念ながら、31回以降の卒業生の方々とは連絡がとれておりません。すこしでも多くのOBの方々と連絡を取り合いたいと思いますので、ごらんになっているOBで今回のご案内が届かなかった方については、下記へご連絡くださるようお願いします。
〒862-0910
熊本市健軍本町17-13-405
古城和哉(コジョウカズヤ)(学部30回卒業)
TEL 090-7292-7915 FAX 096-368-0159
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【2010年1月15日公開】